仮想通貨について調べていると、「DeFi(ディーファイ)」という言葉を見かけることがあります。
DeFiとは、Decentralized Financeの略で、日本語では「分散型金融」と呼ばれます。
ブロックチェーンやスマートコントラクトを利用し、暗号資産の交換や貸借などの金融サービスを提供する仕組みです。
DeFiは、取引所に資産を預ける方式とは異なる特徴を持ちますが、管理者がいないから安全というわけではありません。
この記事では、DeFiの基本的な仕組み、何ができるのか、利用前に知っておきたいリスクを解説します。
DeFiとは?従来の取引所との違い
DeFiは、ブロックチェーン上のプログラムを使って金融取引を行う仕組みです。
例えば、暗号資産を交換したり、担保を預けて別の暗号資産を借りたりするサービスがあります。
これらの処理では、「スマートコントラクト」と呼ばれるプログラムが重要な役割を果たします。
スマートコントラクトは、あらかじめ設定された条件に従って、ブロックチェーン上で取引を実行する仕組みです。
国内取引所とDeFiの比較
| 比較項目 | 一般的な国内取引所 | 一般的なDeFi |
|---|---|---|
| 取引の方法 | 事業者が提供するサービスを利用 | スマートコントラクトなどを利用 |
| 資産の管理 | 事業者へ預託する方式が一般的 | 自己管理ウォレットを使う方式が多い |
| 利用に必要なもの | 口座・本人確認など | 対応ウォレット・ネットワーク上の資産など |
| 日本円での入出金 | 対応するサービスがある | 通常、別の交換手段が必要 |
| 主なリスク | 事業者の破綻・出金停止など | スマートコントラクトの不具合・誤署名など |
ただし、DeFiにも管理者権限を持つ運営者や、システムの変更を決定する組織が存在する場合があります。
すべてのDeFiが完全に分散化されているわけではありません。
DeFiでできること3つ
① DEXで暗号資産を交換する
DEXとは、Decentralized Exchangeの略で、分散型取引所を意味します。
DEXでは、対応するウォレットを接続し、スマートコントラクトを使ってトークンを交換する方法があります。
例えば、ETHを別のトークンに交換する操作などです。
ただし、国内の暗号資産交換業者と異なり、日本円の入出金に対応しないDEXもあります。
また、表示された交換価格と実際の成立価格がずれる「スリッページ」や、流動性不足による不利な交換条件に注意が必要です。
取引を実行する際には、ネットワーク手数料も確認しましょう。
② 暗号資産を貸したり借りたりする
DeFiでは、暗号資産を貸し出したり、暗号資産を担保に別の資産を借りたりできるサービスがあります。
一部のプロトコルでは、利用者が資産をスマートコントラクトへ預け、借り手が担保を差し入れて利用する仕組みを採用しています。
ただし、資産を預けた場合、すぐに全額を引き出せるとは限りません。
流動性不足、価格変動、プロトコルの不具合などにより、損失が発生する可能性があります。
また、担保を差し入れて借入を行う場合は、担保価格の下落によって清算されるリスクがあります。
表示されている利回りは、将来の報酬や元本返還を保証するものではありません。
③ 流動性を提供する
一部のDEXでは、利用者がトークンを預け、ほかの利用者の交換取引に必要な流動性を提供できます。
流動性を提供した利用者は、取引手数料などに由来する報酬を得られる場合があります。
ただし、預けたトークンの価格が変動すると、単純に保有していた場合と比べて資産価値が不利になることがあります。
これは一般に「インパーマネントロス」と呼ばれる現象に関係します。
ほかにも、スマートコントラクトの不具合や流動性不足などのリスクがあります。
手数料収入だけで実際の損益を判断しないことが大切です。
DeFiを使うときのウォレット接続とトークン承認
DeFiでは、自己管理ウォレットを使ってサービスへ接続することがあります。
ここで区別したいのが、ウォレット接続・トークン承認・取引の実行です。
| 操作 | 主な意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| ウォレット接続 | アドレスなどをサービスと共有する | 接続先URLを確認する |
| トークン承認 | 指定したトークンを一定の範囲で使用する権限を与える | 承認先と上限数量を確認する |
| 取引の実行 | 交換・預入・送金などをブロックチェーン上で処理する | 受取数量・送金先・手数料などを確認する |
特に重要なのがトークン承認です。
ERC-20トークンなどを利用する場合、外部のスマートコントラクトへトークンの使用権限を与えることがあります。
このとき、必要以上に大きな数量を承認すると、接続先の脆弱性や不正な操作によって被害が拡大する可能性があります。
利用するウォレットによっては、承認するトークン数量の上限を設定できます。
また、ウォレットとWebサイトの接続を切断しても、ブロックチェーン上の承認が自動的に取り消されるとは限りません。
MetaMask公式は、ウォレットの接続解除とトークン承認の取り消しは異なる操作であると説明しています。
DeFiを利用する前に知りたいリスク
① スマートコントラクトの不具合
DeFiはプログラムを利用して金融取引を実行します。
そのため、スマートコントラクトに不具合がある場合、資産が失われたり、引き出せなくなったりする可能性があります。
第三者による監査を受けているプロトコルでも、あらゆる不具合が発見されているとは限りません。
監査済みという表示だけで、資産の安全性を保証されたと判断しないようにしましょう。
② 不正な署名や偽サイト
DeFiの利用では、ウォレットに署名やトークン承認を求める画面が表示される場合があります。
しかし、偽サイトへ接続して不正な権限を与えてしまうと、暗号資産を移転される可能性があります。
操作の目的が分からない場合は、承認を進めないでください。
ウォレットの秘密鍵や復元フレーズを、DeFiサービスのログイン画面やサポート担当者に渡す必要はありません。
③ 価格変動・清算・流動性のリスク
DeFiで資産を貸し出したり、担保にして借りたりする場合は、暗号資産の価格変動にも注意が必要です。
担保価値の下落によって清算が発生する場合や、資産の引き出しを希望しても十分な流動性がない場合があります。
報酬を受け取っていても、預けた資産の価格下落によって円換算で損失になる可能性があります。
④ 運営・規制・ネットワークのリスク
DeFiには、プロトコルの更新権限を持つ運営者、ガバナンスによる変更、ブロックチェーン自体の障害など、さまざまなリスクがあります。
また、利用する国や地域によって法的な取り扱いも異なります。
サービスが利用できることと、日本国内での利用に関する法的・税務上の問題がないことは同じではありません。
DeFiを利用する前に確認する5つのこと
DeFiを理解するために、実際に資産を送る必要はありません。
まずは次の項目を確認しましょう。
- 何をするサービスか:交換・貸付・借入・流動性提供など、仕組みを理解する
- 誰が変更・停止できるか:管理者権限や運営体制を確認する
- どの資産を使うか:銘柄、ネットワーク、担保、対応ウォレットを確認する
- 何を承認するか:トークン承認、取引内容、手数料を確認する
- どう損失が起こるか:価格変動、清算、流動性不足、不正アクセスなどを確認する
取引を試す場合も、資産を失うリスクを理解できない操作は行わないことが重要です。
なお、取引所への預託と自己管理ウォレットの違いについては、仮想通貨の安全な保管方法で解説しています。
よくある質問
Q. DeFiは銀行や取引所より安全ですか?
一律に安全とはいえません。事業者へ資産を預けるリスクを減らせる場合がありますが、スマートコントラクト、不正署名、清算、流動性不足など、異なるリスクがあります。
Q. DeFiなら必ず高い利回りを得られますか?
いいえ。報酬条件は市場やプロトコルによって変動し、元本返還も保証されません。報酬数量と円換算の実際の損益を分けて確認しましょう。
Q. ウォレットを接続するだけで資産が盗まれますか?
接続だけで直ちに資産移転の権限を与えるとは限りません。ただし、続けて表示される署名やトークン承認によって資産を移転されるリスクがあります。接続先と承認内容を確認してください。
Q. DeFiの利益にも税金はかかりますか?
暗号資産の交換や報酬取得などによって所得が発生する場合があります。取引内容によって計算方法が異なるため、履歴を保存し、仮想通貨の税金と確定申告の基本を確認してください。
DeFiの画面を見るときに知っておきたい5つの用語
DeFiサービスの画面には、取引所では見慣れない用語が表示されることがあります。
初心者が特に混同しやすいのは、次の5つです。
| 用語 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| TVL | プロトコルなどに預けられている資産の評価額 | 利用者の利益や安全性を保証しない |
| APR | 複利を考慮しない年率表示 | 表示が変動する場合がある |
| APY | 所定の複利条件を反映した年換算の利回り | 計算上の条件であり、将来の実績を保証しない |
| LTV | 担保価値に対する借入額の割合 | 高いほど清算までの余裕が小さくなる場合がある |
| スリッページ | 見積もりと実際の交換条件のずれ | 流動性や取引数量によって変わる |
例えば、画面に「APY 10%」と表示されていても、必ず1年間で資産が10%増えるという意味ではありません。
報酬条件が変動したり、預けた暗号資産の価格が下落したりする可能性があるためです。
また、報酬がプロトコル独自のトークンで支払われる場合、そのトークン自体の市場価格も変動します。
利回り表示と、最終的な日本円評価額の増減は別のものです。
DeFiでトークンを交換するときの確認手順
DeFiを理解するために、実際に資産を送ったり、ウォレットを接続したりする必要はありません。
まずは、DEXでトークンを交換すると仮定して、どのような確認が必要になるか見てみましょう。
- 利用しようとしているDEXの正式名称と公式URLを確認する
- 利用するブロックチェーンと対応ウォレットを確認する
- 交換するトークンのコントラクトアドレスを確認する
- 交換前後の数量と見積もり価格を確認する
- スリッページとネットワーク手数料を確認する
- トークン承認を求められる場合は、承認先と上限数量を確認する
- 取引後は実際の受取数量とトランザクション履歴を確認する
例えば、100USDCを別のトークンへ交換する場合、画面には交換後の予想数量が表示されることがあります。
ただし、交換までの間に市場価格や流動性が変化すると、受け取る数量が見積もりと異なる可能性があります。
また、トークンを交換する前に、スマートコントラクトへUSDCの使用権限を与えるよう求められる場合があります。
このとき、交換に必要な数量だけを承認するのか、それより大きな数量を承認するのかによって、許可する権限の範囲が変わります。
交換する数量と、外部のスマートコントラクトに使用を許可する数量は、同じとは限りません。
承認する内容が分からない場合は、その取引を進めないようにしましょう。
トークン承認は取引が終わっても残る場合がある
DeFiでトークンを交換した後、「取引が終わったから権限も自動的になくなる」と考えるのは適切ではありません。
トークン承認は、ブロックチェーン上で記録される権限設定です。
承認した数量を使い切っていない場合や、上限の大きい権限を与えた場合は、その権限が残ることがあります。
例えば、100USDCを交換するために、スマートコントラクトへ1,000USDC分の使用権限を与えたケースを考えます。
交換が完了しても、その権限が自動的にすべて取り消されるとは限りません。
そのため、使わなくなったサービスのトークン承認を定期的に確認する考え方があります。
ただし、承認を取り消す操作自体にも、ネットワーク手数料がかかる場合があります。
また、接続解除と承認取り消しは異なります。
| 操作 | 主な役割 |
|---|---|
| ウォレット接続解除 | サイトとの接続関係を解除する |
| トークン承認の取り消し | スマートコントラクトへ与えたトークン使用権限を取り消す |
| 新しいウォレットへの移転 | 管理する鍵や資産の保管先を変更する |
ウォレットを接続解除しても、すでに与えたトークン承認が残る場合があります。
さらに、不要な承認を取り消したとしても、すでに第三者へ移転された資産が自動的に返還されるわけではありません。
承認の確認・取り消しは、利用するウォレットやネットワークの公式案内に従って行いましょう。
DeFiで暗号資産を借りるときの清算リスク
DeFiで資産を担保にして借入を行う場合、担保の価格が下落すると、預けた資産の一部または全部が清算される可能性があります。
例えば、Aaveでは借入ポジションの健全性を「ヘルスファクター」という数値で表します。
ヘルスファクターは、担保の価値、清算基準、借入額などに基づいて計算されます。
Aaveでは、ヘルスファクターが1を下回ると、清算の対象になる可能性があります。
担保の価格が下落した場合の計算例
仕組みを理解するために、次の架空の条件を考えます。
- 担保として預けた暗号資産の評価額:1,000ドル
- 清算基準:80%
- 借入額:500ドル
この場合のヘルスファクターは、単純化すると次のとおりです。
1,000ドル × 80% ÷ 500ドル = 1.6
その後、担保価値が600ドルに下落し、借入額が500ドルのままだったと仮定します。
600ドル × 80% ÷ 500ドル = 0.96
この例では、ヘルスファクターが1を下回っています。
実際の清算条件は、プロトコルや担保にする資産、適用されるパラメータなどによって異なります。
ただし、重要なのは、暗号資産の価格が下落すると、売却操作をしていなくても担保が清算される可能性があるという点です。
また、借入金利が変動したり、借入残高が増えたりすることによっても、ポジションの状況が変わる可能性があります。
流動性提供では報酬が出ても損失になることがある
DEXの流動性プールに暗号資産を預けると、交換手数料などに由来する報酬を受け取れる場合があります。
しかし、報酬が発生していても、単純に保有していた場合より資産価値が小さくなる可能性があります。
これを理解するために、一定の仕組みを持つ流動性プールの計算例を考えます。
ここでは、手数料や報酬を考慮せず、価格範囲を限定しない一定積型のプールを仮定します。
- 最初のETH価格:1ETH=100ドル
- プールに預ける資産:1ETH+100USDC
- 最初の合計評価額:200ドル
この例では、1USDC=1ドルを維持し、他の利用者の資金追加や引き出しもないと仮定します。
その後、ETHの価格が200ドルへ上昇したとします。
最初の1ETHと100USDCをウォレットで保有し続けた場合、合計評価額は300ドルです。
一方、この条件の流動性プールでは、価格変化によって保有するETHとUSDCの数量が変化します。
単純化したモデルでは、ETH約0.7071枚とUSDC約141.42枚になり、合計評価額は約282.84ドルです。
| 保有方法 | ETH価格上昇後の評価額 |
|---|---|
| 1ETH+100USDCをそのまま保有 | 300ドル |
| 一定積型プールへ流動性提供 | 約282.84ドル |
| 単純保有との差 | 約17.16ドル |
この差は、価格変動による流動性提供特有の損益を説明する例です。
実際には取引手数料収入やプールの仕組みなどが関係するため、最終的な損益は変わります。
また、流動性プールの方式によって計算方法も異なります。
流動性提供の報酬だけを見るのではなく、預けた資産数量と円換算評価額の変化を含めて確認しましょう。
DeFiの損益を記録するときの注意点
DeFiでは、取引所の年間取引報告書だけで履歴を整理できないことがあります。
特に、トークン交換、報酬取得、流動性提供、借入、返済などを行う場合は、取引ごとの内容を記録しておくことが重要です。
例えば、次の情報を保存しておきましょう。
- 取引日時とトランザクションID
- 利用したネットワークとプロトコル
- 差し入れた資産の銘柄・数量・円換算額
- 受け取った資産の銘柄・数量・円換算額
- 報酬取得の日時・数量・取得時評価額
- 支払ったネットワーク手数料
- 借入・返済・清算が発生した場合の取引記録
なお、同じDeFiでも取引内容によって税務上の扱いが異なる場合があります。
トークンの交換や報酬取得など、所得が発生する取引を行った場合は、国税庁の案内に従って計算する必要があります。
報酬の数量が増えていても、円換算の資産価値が増えているとは限りません。
また、税務上の所得と、最終的な投資損益が一致するとも限りません。
DeFiの仕組みを理解する段階では、実際に資産を預ける必要はありません。利用する場合は、取引内容や損失条件を説明できるようになってから判断しましょう。
まとめ|DeFiは便利さとリスクを分けて考えよう
DeFiは、スマートコントラクトなどを使って暗号資産の交換・貸借といった金融サービスを提供する仕組みです。
国内の暗号資産交換業者とは資産管理や取引方法が異なり、自己管理ウォレットを利用する機会も多くなります。
ただし、分散型という名称だけで安全性が保証されるわけではありません。
利用するサービスの仕組み、資産の管理者、承認内容、損失が起こる条件を理解することが大切です。
暗号資産を事業者へ貸し出すサービスとの違いを知りたい方は、暗号資産レンディングの仕組みと注意点も参考にしてください。

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