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スリッページとは?許容率と価格インパクト・最低受取数量を解説

仮想通貨スリッページの見積もり・許容率・受取数量 基礎知識

仮想通貨を別の通貨に交換するとき、画面に「10枚受け取れる予定」と出ていたのに、実際には少し少ない枚数になることがあります。この見積もりと実際の受取数量のずれを「スリッページ」と呼びます。ウォレット(資産を管理するアプリ)を使って交換する人なら、注文前に知っておきたい言葉です。

たとえば受取見積が10トークン(仮想通貨の一種)で、画面の「許容率」を1%にした場合、単純な方式では最低受取は9.9トークンです。これは最初から1%の手数料を取られるという意味ではありません。また、自分の注文量で交換レートが動く「価格インパクト」とも別の話です。

まず①見積受取数量、②最低受取数量、③交換に必要な費用を画面で確認しましょう。許容率をむやみに上げると、不利な結果まで受け入れる範囲が広がります。条件を満たさず交換が失敗しても、取引を記録・共有する仕組み(ブロックチェーン)上で処理を試みた費用がかかる場合があります。記事では計算例を使って読み方を説明します。

結論 交換前には①見積受取数量、②最低受取数量、③価格インパクト、④スワップ手数料、⑤ネットワーク費用を別々に確認します。許容率を広げると取引が通る可能性は変わりますが、不利な価格でも成立する範囲が広がるため、無条件に引き上げるべきものではありません。

スリッページとは?「見積と実際の差」を意味する

注文の価格影響と見積もり後の価格変動の違い

暗号資産の価格は短時間でも変化します。ウォレットで交換の見積を見た時点から、取引がブロックに取り込まれて実行されるまでに、交換用に集められた資産の置き場(流動性プール)の残高や、他の利用者の取引が変わることがあります。その結果、最初の見積と実際の受取数量に差が生じます。

例えば、取引前の見積ではあるトークンを10枚受け取ると表示されていたのに、実際に交換が成立したとき(約定)には9.95枚だった場合、見積からの減少は0.05枚です。割合は0.05÷10×100=0.5%となります。逆に条件が改善し、10.02枚受け取る場合もあります。スリッページは不利な方向だけの概念ではありませんが、操作画面の「許容率」は主に不利な方向のずれに対する保護条件として利用されます。

Uniswap公式は、スリッページと価格インパクトを明確に分けています。Uniswap公式「Price Impact vs Price Slippage」によれば、価格インパクトは自分の注文量によって交換レートがどれだけ動くかという影響、スリッページは見積と取引後の実際の差です。

スリッページ・価格インパクト・手数料の比較

項目 何を意味するか 原因・決まり方 確認する欄
スリッページ 見積と実際の結果のずれ 執行までの価格・プール状態の変化等 見積と実績
許容スリッページ 不利なずれを受け入れる上限の設定 利用者の設定や取引方式 許容率・最低受取
価格インパクト 自分の注文がプール価格に与える影響 注文量と流動性の関係 価格影響の表示
スワップ手数料 交換に適用されるプロトコル等の費用 利用プール・経路・方式等 手数料の内訳
ネットワーク費用 チェーン上で取引を処理する費用 ガス使用量とネットワーク状況等 ガス代・ネットワーク費用

これらは全部を足せばよい単純な項目ではありません。見積額に価格インパクトやプール手数料が反映されている場合、同じ費用をさらに差し引くと二重計算になります。画面の「予想受取」がどの費用を考慮しているか確認しましょう。

許容率1%なら最低受取はいくつ?10トークンの計算

見積10枚、許容1パーセントで最低受取9.9枚となる単純例

初心者にとって最も分かりやすいのは、最低受取数量の計算です。まず、あるスワップの交換後の見積を10トークンとします。ここで不利な方向へのスリッページ許容率を1%と設定した場合、交換に出す量を固定し、受け取る量の下限を決める方式(固定入力・最低出力方式)では次の計算になります。

最低受取数量=見積受取数量×(1−許容率)=10×(1−0.01)=9.9トークン

この例では、執行時の受取数量が9.95トークンなら許容範囲内です。一方、9.85トークンしか受け取れない状態になっていたら、最低受取9.9トークンという条件を満たさず、通常は交換処理が成立しません。

ここでの10トークンは、例を単純にするためスワップ手数料等を織り込んだ「画面の見積受取数量」と仮定しています。ネットワーク費用は別に発生し得ます。実際のアプリではトークン固有の送金手数料、複数の交換先から経路を選ぶ仕組み(ルーティング)、別方式の注文保護などがあるため、アプリに表示される最低受取値を優先して確認します。

許容率を変えた場合の最低受取比較

見積受取 許容率 最低受取数量(架空例) 注意すること
10トークン 0.1% 9.99トークン 少しの変化でも失敗し得る
10トークン 0.5% 9.95トークン 0.05枚までの不利なずれ
10トークン 1% 9.9トークン 0.1枚までの不利なずれ
10トークン 3% 9.7トークン より不利な条件でも成立し得る

許容率が3%なら必ず3%少なく受け取るという意味ではありません。予想とほぼ同じ数量で成立することもあります。ただし、その注文が受け入れる最悪側の条件は広がります。特に少額でも価格変動の激しいトークンや、流動性が薄いプールでは慎重に確認しましょう。

許容率の表示が変更できない場合もある

UniswapXなど、ブロックチェーン上で直接処理する交換(オンチェーンスワップ)と異なる注文方式では、ユーザーがスリッページ率を自由に設定しない設計があります。Uniswap公式「UniswapXで許容率を変更できるか」では、従来のスワップ向け設定がUniswapXへ適用されないと説明しています。

DEXの名称だけで設定画面が同じと考えず、実際の執行方式と最低受取数量を確認することが大切です。

価格インパクトとは?自分の注文で価格が動く

価格インパクトは、一般にスワップの注文量がプール内の価格へ与える影響を指します。同じトークンを交換する場合でも、プールの流動性が厚ければ価格が動きにくく、薄ければ大きな注文で価格が動きやすくなります。

例えば、プールにトークンAが1,000枚、Bが1,000枚ある預けられた2種類の資産量の積を一定に保つ計算方式(一定積AMM)を考えます。手数料をゼロとした数学的な例では、Aを100枚投入した後のB残高は1,000,000÷1,100≒909.09枚となります。そのため受取Bは約90.91枚で、交換前の残高比から期待する100枚より少なくなります。

この差は、取引前に行った見積にすでに反映される種類の価格インパクトです。そのあと取引がブロックへ取り込まれるまでに別の売買が入って見積が変われば、その変化がスリッページに関係します。

取引量を半分にすれば同じ損失率?

同じ架空プールにAを50枚追加するケースでは、B残高は1,000,000÷1,050≒952.38枚となり、受取は約47.62枚です。交換前の比率であれば50枚に相当するため、差は約2.38枚です。

A100枚の例は受取約90.91枚で、交換前の比率との差は約9.09枚です。数量を2倍にすると、価格への影響が単純に2倍ではなく大きくなることが見て取れます。これは一定積プールだけを使う教育用の計算であり、実際の集中流動性AMM、手数料、複数経路交換へそのまま適用するものではありません。

Uniswap公式の価格インパクト解説でも、プールの流動性と注文の大きさが影響することが説明されています。

価格インパクトが大きい取引をどう判断する?

まず、正しいトークンとネットワークを選んでいるか確認します。同名の偽トークンや極端に流動性が少ないプールでは、数字が異常に見えることがあります。次に、最終受取見積と、現在の他の取引経路の条件を確認しましょう。

「量を小さく分ける」という方法も一つの検討材料ですが、分割すれば常に総費用が下がるわけではありません。複数回のガス代や価格変動、ルーティングの違いが生じます。取引を見送る選択肢も含めて判断してください。

なぜスリッページが発生する?4つの主な原因

① 見積から執行までに時間がある

ユーザーが画面で受取額を見て署名し、ブロックへ組み込まれるまでには時間差があります。その間にプールの価格が変われば、見積が古くなる可能性があります。ネットワークが混雑すると処理までの時間も変わります。

② 他の利用者の取引が先に処理される

同じプールを使って別の利用者が先に大量のトークンを売買した場合、プール内の比率が変わります。後から処理された自分の注文の見積が悪化することがあります。特に短期間で大量注文が入る場面では差が大きくなる可能性があります。

③ 流動性が薄く、小さな注文でも価格が動く

市場の流動性が薄いと、少ない注文量でも価格インパクトが大きくなることがあります。ここでも価格インパクトとスリッページは同じではありません。価格インパクトを含んだ見積を受け入れた後でも、執行までの価格変化によってスリッページが追加で起きる場合があります。

④ MEVやサンドイッチ攻撃の影響を受ける

MEVとは、取引の並べ方や含め方から得られる追加的な利益などを指す概念です。サンドイッチ攻撃では、第三者が対象注文の前後に取引を置くことで、利用者に不利な価格を生じさせようとすることがあります。

許容スリッページを広げると、こうした不利な価格変化も成立条件の範囲内に入りやすくなる場合があります。ただし、スリッページ許容率だけですべてのMEVを防げるわけではありません。ウォレットが用意する取引保護などの機能と、その適用条件も確認してください。Uniswap公式のスワップ保護説明では、対象ネットワークやプライベートな送信経路について案内しています。

許容率を大きくすれば必ず交換できる?

不成立時にも費用が残る場合と確認すべき項目

許容率は最低受取数量に関係しますが、取引が失敗する原因はスリッページだけではありません。ガス代が足りない、トークンに送金制限がある、コントラクトが標準と異なる、交換期限が切れた、といった場合には許容率を変更しても解決しないことがあります。

例えば、見積10トークンに対して許容率1%なら最低9.9トークンです。これを5%に変えると最低は9.5トークンになりますが、0.4トークン分だけ不利な条件でも取引を許すことになります。取引が成功したとしても、受取数量が満足できるとは限りません。

また、トークンの売却時に独自の税・手数料を徴収する実装が存在します。詐欺的なトークンはそもそも売却を禁止する仕組みを持つ場合もあります。そうした場合、許容率の大幅な引き上げを安易に解決策として選ばないことが重要です。

「失敗したのにガス代がかかった」はなぜ?

ブロックチェーン上で処理された取引がリバートした場合、交換による状態変更は取り消されても、実行に使われた計算資源の費用は発生し得ます。Ethereum公式のガス代資料は、実行失敗時にもガス代が発生する仕組みを説明しています。Uniswapのネットワーク費用の案内も、チェーン上での処理が失敗した場合の費用を紹介しています。

ただし、ユーザーが確認画面を閉じただけの場合や、トランザクションが送信前に拒否された場合は、オンチェーンの実行費用が発生しないこともあります。また、UniswapXでは第三者執行者がネットワーク費用を負担する方式があり、標準的なオンチェーンスワップと同一視できません。

起きたこと トークン交換 ネットワーク費用の考え方
送信前に操作を中止 行われない 通常はチェーン上の実行費用なし
送信前の検証で拒否 行われない オンチェーン実行がなければ費用なし
チェーン上で取引がリバート 成立しない 使用したガス代が発生し得る
第三者執行型の注文が不成立 方式による 注文者と執行者の負担条件を確認

損失を避けるためには「失敗=無料」とも「すべての失敗に必ず同じ費用」とも考えず、取引履歴と処理方式を確認する必要があります。

スワップ前に確認したい6つの表示

まず「交換前の入力数量」と「受取見積」を確かめます。続いて、トークンアドレスやネットワークが意図どおりか確認します。特に同じ名前を持つトークンや、別チェーンのラップ資産に注意しましょう。

次に、最低受取数量を見ます。表示されている値が、自分の許容できる数量を下回っているなら、許容率や交換量を見直すだけでなく、その交換自体を取りやめる判断もできます。

さらに、価格インパクトの警告、プールの手数料、ネットワーク費用を確認します。見積の中へ組み込まれている費用と、別途支払う費用を分けて読む必要があります。

最後に、署名する取引の内容を見ます。ERC-20を利用する場合は、取引前の承認が交換とは別に必要になることがあります。どのコントラクトへいくらのトークン利用を許可するかを把握してください。

確認欄 読み方 見落とすと困ること
入力数量 自分が渡すトークンと数量 別トークンを渡す
見積受取 現在条件での予想数量 価格影響を見落とす
最低受取 執行を認める下限数量 想定以上の不利な約定
価格インパクト 自分の交換による価格への影響 流動性不足に気づかない
ネットワーク費用 ガス代等 失敗時の費用を見落とす
承認・署名 相手コントラクトへ認める操作 過大な利用許可を残す

CEXの成行注文でも「滑る」ことはある?

スリッページはDEXだけで生じるものではありません。中央集権型取引所の注文板で成行注文を出す場合も、希望する価格帯の買い注文・売り注文が足りなければ、複数の価格で約定することがあります。

例えば成行売りでは、通常は買い板の高い価格から順に消化され、数量が大きいと低い価格帯へ約定が進む場合があります。ただしCEXの注文板での価格の「滑り」と、AMMでの価格インパクト、画面上の許容率設定は同じ仕組みではありません。

指値注文・成行注文の詳しい約定例は仮想通貨の指値と成行の違いを参照してください。DEXでの交換方法全体を比較したい場合は、DeFiの仕組みでスマートコントラクトの基礎も確認できます。

スリッページのよくある質問

Q. 許容率1%なら必ず1%損しますか?

いいえ。許容率は不利な変化をどこまで受け入れるかの条件です。見積どおりに約定する場合や、より有利な結果となる場合もあります。交換の実績は取引履歴で確認してください。

Q. 10トークン見積で1%許容なら最低受取はいくつですか?

単純な固定入力・最低出力方式なら、10×0.99=9.9トークンです。ネットワーク費用などは別に発生し得ます。特別なトークン手数料や注文方式では画面表示の条件を確認します。

Q. 許容スリッページは手数料ですか?

いいえ。利用者が設定する価格条件であり、固定で徴収される費用ではありません。プロトコルの交換手数料やガス代とは別に理解してください。

Q. 価格インパクトとスリッページは同じですか?

異なります。価格インパクトは自分の取引がプール価格へ与える影響で、スリッページは見積から実際の執行結果への変化です。見積に価格インパクトが含まれている場合があります。

Q. スリッページを上げれば交換失敗はなくなりますか?

なくなりません。ガス代不足、期限切れ、トークンの売買制限、スマートコントラクトの問題など、別の原因があり得ます。上限を広げると不利な価格でも成立する範囲も広がります。

Q. 許容率0%にすれば最も安全ですか?

必ずしもそうではありません。見積後にわずかな不利な変化が起きただけで失敗しやすくなる場合があります。失敗時のネットワーク費用や取引方式も考える必要があります。

Q. 失敗したのにETHが減ったのはなぜですか?

オンチェーンでトランザクションが実行されてリバートした場合、ガス代が発生することがあります。取引の成功・失敗、ガス使用量、TxIDをブロックエクスプローラー等で確認してください。

Q. 交換を分割すれば価格インパクトは必ず減りますか?

同じ状態のAMMでは一度の注文量を減らすと影響が小さくなる場合がありますが、分割取引の間に価格が変わり、ガス代も増える可能性があります。合計の受取額が必ず改善するわけではありません。

Q. 全てのDEXでスリッページ設定を変えられますか?

いいえ。執行者が注文条件を引き受ける方式など、従来の許容率設定が適用されない場合があります。特に最低受取数量の表示と注文方式を確認してください。

Q. サンドイッチ攻撃は許容率を下げれば防げますか?

不利な執行条件を制限する助けになる場合がありますが、すべての攻撃を防げる保証はありません。ウォレットやサービスの取引保護、公式の注意喚起も確認してください。

まとめ|最低受取と価格インパクトを別々に読む

スリッページは、見積と実際の執行結果の差です。許容率はその差の許容条件であり、価格インパクトやガス代とは別の指標です。見積10トークンに対して許容率1%なら、単純な方式で最低受取は9.9トークンとなります。

取引が失敗するからといって、許容率をただ広げるのは適切ではありません。受取見積、最低受取、価格インパクト、手数料、署名内容、利用ネットワークの順に確認し、納得できない条件なら取引を見送ることも選択肢です。

DEXとCEXの管理・交換方式の差を確認したい場合はDeFiの基礎知識を、Ethereumのネットワーク手数料そのものについてはガス代の仕組みを参考にしてください。

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