「仮想通貨で少し利益が出たけれど、確定申告していない」「20万円以下なら申告しなくてよいと思っていた」
このような場合、まず確認したいのは本当に申告が必要だったのか、対象年の申告期限が過ぎているのか、すでに確定申告書を提出しているのかという3点です。
仮想通貨(暗号資産)で利益が出ても、すべての人に所得税の確定申告義務が生じるわけではありません。ただし、少額なら誰でも非課税というルールもありません。
また、申告が必要だったことに後から気づいた場合でも、状況に応じて申告や訂正の手続きが用意されています。
この記事では、2026年10月時点の国税庁の案内をもとに、仮想通貨の申告漏れに気づいたときの確認方法と対処法を解説します。
先に結論
- 2026年分の利益をこれから申告する人は、通常の申告期限前なら期限後申告ではありません。
- 過去年分について、必要な確定申告を期限までに提出していなければ、期限後申告を検討します。
- 確定申告後に所得の計上漏れが見つかり、税額が不足していた場合は修正申告を検討します。
- 税額を多く申告していた場合は、更正の請求ができる場合があります。
- 所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。
仮想通貨の税金を申告し忘れたら?まず状況を確認しよう
仮想通貨の申告漏れに気づいた場合、最初から罰則を心配するのではなく、対象年と申告状況を整理しましょう。
対応方法は次のように分かれます。
| 現在の状況 | 確認・対応する手続き |
|---|---|
| 2026年分の利益があり、まだ通常の申告期限前 | 年間所得を集計し、必要なら期限内に確定申告 |
| 過去年分で、申告義務があったのに期限までに申告していない | 期限後申告 |
| 過去年分の確定申告は済んでいるが、所得を漏らして税額が不足していた | 修正申告 |
| 確定申告後に税額を多く申告していたと気づいた | 更正の請求ができるか確認 |
| 所得税の確定申告は不要だが、住民税の申告が必要 | 住所地の市区町村で住民税申告 |
| 申告義務の有無が判断できない | 所得・控除・申告状況を整理し、税務署などへ相談 |
※法定申告期限前に提出済みの申告書の誤りを見つけた場合は、期限内に正しい申告書を提出する方法があります。還付処理がすでに行われた場合などは税務署へ確認してください。詳しくは国税庁の期限前の訂正に関する案内をご覧ください。
所得税の確定申告は、原則として1月1日から12月31日までの所得を、翌年の申告期間に申告する仕組みです。
そのため、2026年中に利益が出て、2026年10月時点でまだ確定申告していないこと自体は、申告漏れとは限りません。
一方、2025年以前の所得について、法定期限までに必要な申告をしていなかった場合は、状況を確認して早めに対応しましょう。
少額の仮想通貨利益は申告しなくてもよい?20万円基準を確認
「20万円以下なら申告しなくてもよい」という説明を見たことがある方もいるでしょう。
しかし、この制度はすべての人に適用されるものではありません。
会社員の20万円基準は一定条件の所得税申告不要制度
国税庁によると、給与を1か所から受け取り、給与収入が2,000万円以下で、年末調整が行われているなど一定の条件を満たす給与所得者は、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告を要しません。
例えば、次のようなケースです。
| 年間の所得の例 | 給与・退職所得以外の所得合計 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 仮想通貨10万円のみ | 10万円 | 条件を満たせば所得税の確定申告は不要 |
| 仮想通貨12万円+副業所得8万円 | 20万円 | 条件を満たせば所得税の確定申告は不要 |
| 仮想通貨12万円+副業所得9万円 | 21万円 | 原則として所得税の確定申告が必要 |
※いずれも給与が1か所で年末調整済みなど、ほかに確定申告が必要となる事情がない場合の例です。
ここでいう20万円は、仮想通貨の売却代金ではありません。
取得原価や必要経費を考慮して計算した所得と、ほかの対象所得を合計して判断します。
また、「20万円以上」ではなく「20万円を超えるか」がポイントです。
給与収入が2,000万円を超える人や、複数の勤務先から給与を受け取る人などには、別の申告要件があります。
学生や専業主婦(主夫)、扶養内で生活している人についても、20万円を一律の基準として判断できません。
所得の種類や本人に適用される所得控除、親や配偶者の扶養に関する条件などを確認する必要があります。
詳しくは、仮想通貨の税金はいくらから?2026年の課税タイミングと確定申告の方法をご覧ください。
医療費控除などで確定申告する場合は20万円以下の所得も含める
会社員の20万円以下の申告不要制度には、もう一つ注意点があります。
例えば、年末調整済みの会社員が仮想通貨で10万円の所得を得ていた場合、一定の条件を満たせば所得税の確定申告は不要です。
しかし、医療費控除などを受けるために確定申告をする場合は、その10万円の所得も申告に含める必要があります。
20万円以下の所得を申告書から自由に除外できる制度ではありません。
所得税の申告が不要でも住民税申告が必要になる場合がある
所得税と住民税では、申告の条件が異なります。
住民税には、会社員の所得税における20万円以下の申告不要制度と同じ仕組みはありません。
例えば、給与以外に仮想通貨による15万円の所得があり、所得税の確定申告が不要だった場合でも、市区町村への住民税申告が必要になることがあります。
さいたま市の公式FAQでも、暗号資産取引による所得がある場合、一定の条件で市民税・県民税の申告が必要と説明されています。
所得税の確定申告を提出した場合は、通常、その内容が自治体に連携されるため、同じ所得について住民税申告書を別途提出する必要はありません。
所得税の確定申告をしない場合は、住所地の市区町村の案内を確認してください。
参考:さいたま市「副業の所得が20万円以下の場合でも申告は必要ですか?」
仮想通貨の申告漏れを確認するために必要な記録
申告が必要だったか判断するには、まず対象年の所得を計算する必要があります。
仮想通貨は日本円への売却だけでなく、別の暗号資産との交換や、商品購入への使用、レンディング・ステーキングなどの報酬受取でも所得が発生する場合があります。
そこで、次の記録を集めましょう。
| 必要な記録 | 確認する内容 |
|---|---|
| 取引所の取引履歴 | 購入・売却・交換の日時、数量、金額、手数料 |
| 年間取引報告書 | 年間の購入・売却数量と金額など |
| ウォレットの取引履歴 | 送金・受取・交換の履歴 |
| 報酬の受取履歴 | 取得数量、取得時点の円換算額など |
| 過去の購入履歴 | 前年以前から保有する暗号資産の取得原価 |
| ほかの所得の記録 | 給与・副業所得など、申告判断に必要な情報 |
| 提出済みの申告書 | 実際に申告した所得・控除・税額 |
複数の取引所を利用している場合は、それぞれの履歴を確認します。
海外取引所や自己管理ウォレットを使っている場合も、対象となる取引を整理しましょう。
年間取引報告書があっても、別のサービスで行った取引まで含まれているとは限りません。
取得価額が分からない場合はどうする?
昔購入した仮想通貨の取得価額が分からなくなっている場合もあるでしょう。
国税庁は、取得価額や売却価額が分からない場合の確認方法を案内しています。
国内の暗号資産交換業者を利用した場合は、年間取引報告書や過去の取引履歴を確認しましょう。必要に応じて、事業者へ再交付が可能か問い合わせる方法があります。
海外取引所や個人間取引では、銀行の入出金履歴、暗号資産の取引履歴、当時の取引相場などを利用して金額を確認する方法が示されています。
また、国税庁は売却した暗号資産の取得価額を売却価額の5%相当額として取り扱う方法も認めています。
ただし、取得価額が分からないときに必ず5%で計算しなければならないという意味ではありません。
実際の取得価額が確認できる場合や、複数年にわたって取引している場合は、計算方法を確認して適切に処理しましょう。
取引記録の収集に秘密鍵や復元フレーズは必要ない
取引履歴を整理するときに、ウォレットの秘密鍵や復元フレーズを税務資料として提出する必要はありません。
暗号資産の取引情報を確認するときは、取引所の明細やブロックチェーン上の取引履歴などを利用します。
秘密鍵、復元フレーズ、取引所のログインパスワード、認証コードを第三者へ渡さないでください。
取引履歴の収集を装って、これらの情報の入力を要求するサイトやメッセージには注意しましょう。
申告漏れに気づいたときの手続き|期限後申告・修正申告・更正の請求
取引記録を整理し、申告内容を確認したら、現在の状況に合った手続きを選びます。
① 申告期限を過ぎても未提出の場合:期限後申告
過去年分について、確定申告が必要だったにもかかわらず、法定期限までに申告していなかった場合は、期限後申告を行います。
国税庁は、期限内に申告しなかったことに気づいた場合、できるだけ早く申告するよう案内しています。
基本的な流れは次のとおりです。
- 申告が必要だった年を確認する
- その年の仮想通貨取引とほかの所得を整理する
- 所得控除など申告に必要な情報を集める
- 対象年分の確定申告書を作成する
- 所轄税務署へ申告書を提出する
- 納付が必要な税金を確認して納付する
国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、対応する年分の申告書を作成できます。
作成した申告書は、e-Taxや郵送など、対応する方法で提出できます。
期限後申告によって納める所得税は、原則として申告書を提出した日が納期限です。
申告書の提出と税金の納付は別の手続きです。
申告書を提出しても、税金が自動的に納付されるわけではありません。国税庁は、インターネットバンキング、クレジットカード、スマホアプリ、金融機関の窓口などの納付方法を案内しています。
納付が難しい場合は、放置せずに税務署へ相談しましょう。利用できる制度や必要な手続きを確認してください。
参考:国税庁「国税の納付手続」
なお、所得税の確定申告義務がなかった場合は、申告していないことだけを理由に期限後申告が必要になるわけではありません。住民税申告の要否は別途確認してください。
② 確定申告後に所得の漏れが見つかった場合:修正申告
すでに確定申告書を提出していて、法定申告期限を過ぎてから申告漏れに気づいた場合は、修正申告が必要になることがあります。
例えば、次のようなケースです。
- 国内取引所の利益だけ申告し、海外取引所の利益を計上していなかった
- BTCをETHに交換した取引を所得計算に含めていなかった
- レンディング報酬の一部を計上していなかった
これらの結果、納める税金が少なすぎたり、還付される税金が多すぎたりした場合は、修正申告によって訂正します。
国税庁の「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」では、対応する申告書を作成できます。
修正申告によって追加で納める税金は、原則として修正申告書を提出した日が納期限です。
なお、最初の申告が期限内だったか期限後だったかによって、加算税の取り扱いが異なる場合があります。
③ 税金を多く申告していた場合:更正の請求
反対に、所得を多く計算していたなどの理由で、納める税金が多すぎた場合は、更正の請求ができることがあります。
例えば、すでに申告した暗号資産の取得原価に計算誤りがあり、正しく計算すると税額が少なくなる場合などです。
更正の請求は、税務署に正しい税額への訂正を求める手続きです。
請求内容が認められた場合、納めすぎた税金が還付されることがあります。
更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。
ただし、申告の種類や事情によって扱いが異なる場合があります。
申告し忘れた場合、加算税や延滞税はどうなる?
申告が必要だったにもかかわらず、期限までに申告しなかった場合や、申告した税額が不足していた場合は、本来納める税金に加えて、加算税や延滞税が生じることがあります。
ただし、すべての人に同じ税率や金額が適用されるわけではありません。
| 名称 | 主な対象 |
|---|---|
| 無申告加算税 | 確定申告義務があるのに期限までに申告しなかった場合など |
| 過少申告加算税 | 申告した税額が不足していた場合など |
| 延滞税 | 納付期限までに税金を納めなかった場合など |
| 重加算税 | 事実の隠蔽や仮装など、所定の要件を満たす場合 |
実際の取り扱いは、申告した時期、税務調査の事前通知の有無、申告内容、過去の状況などによって変わります。
国税庁は、税務調査の事前通知前に自主的に修正申告した場合、過少申告加算税はかからないと説明しています。ただし、当初の申告が期限後申告だった場合には無申告加算税がかかることがあり、延滞税なども別に確認します。
一方、期限後申告には無申告加算税が適用される場合があり、自主的に申告すれば必ず加算税がなくなるわけではありません。
期限後申告でも、所定の要件をすべて満たす場合には無申告加算税がかからない制度があります。
大切なのは、申告漏れに気づいた時点で状況を確認することです。
加算税の有無や金額を自己判断で決めつけず、必要な申告と納付の手続きを進めましょう。税額や過去年分の扱いが分からない場合は、税務署や税理士に相談できます。
参考:国税庁「確定申告を忘れたとき」、国税庁「確定申告を間違えたとき」
仮想通貨の少額利益・申告漏れに関するよくある質問
Q. 仮想通貨で5万円しか利益がなくても申告が必要ですか?
所得税の確定申告が必要かは、本人の所得状況などによって異なります。
年末調整済みの会社員で一定の要件を満たす場合は、給与所得・退職所得以外の所得が合計20万円以下なら、原則として所得税の確定申告を要しません。
ただし、住民税の申告が必要になる場合があります。また、医療費控除などで所得税の確定申告をする場合は、少額の所得も申告に含める必要があります。
Q. 2026年に仮想通貨の利益が出ました。まだ申告していませんが大丈夫ですか?
2026年分の所得税の確定申告は、通常、2027年の申告期間に行います。
2026年10月時点では、2026年分の通常の法定申告期限はまだ到来していません。
そのため、2026年分についてまだ申告書を提出していないことだけで、期限後申告が必要になるわけではありません。
年末までの取引記録を整理し、申告の必要性と対象年分の申告期限を確認しましょう。
Q. 去年の仮想通貨の利益を申告し忘れました。今からでも申告できますか?
確定申告が必要だった場合、法定期限を過ぎていても期限後申告ができます。
まず、対象年の取引履歴とほかの所得を整理し、申告義務があったか確認してください。
申告が必要だった場合は、国税庁の案内に従ってできるだけ早く手続きを進めましょう。
Q. 税務署は仮想通貨の取引をすべて把握していますか?
税務当局は、法令に基づき、必要に応じて事業者から取引に関する情報を収集することがあります。
海外の税務当局との情報交換によって、取引内容が確認される事例もあります。
ただし、個々の利用者のすべての取引履歴を、常に完全に把握していると断定することはできません。
申告義務は、取引が把握されているかどうかで決まるものではありません。
Q. 海外取引所の利益やレンディング報酬も申告対象ですか?
海外取引所で行った暗号資産の売買・交換や、レンディングなどで取得した報酬も、所得計算の対象になる場合があります。
利用したサービスごとに履歴を集め、取得時点の円換算額や売却時の損益などを確認しましょう。
複雑な取引がある場合は、暗号資産の税務に詳しい税理士への相談も検討してください。
Q. 税金の計算方法が分からない場合はどうすればよいですか?
まず、仮想通貨の税金の計算方法と確定申告の解説を確認してください。
国税庁は、暗号資産の所得計算に利用できる計算書を提供しています。
取得価額が分からない取引や、複数の海外取引所を利用した取引がある場合は、取引履歴を整理したうえで税務署や税理士へ相談しましょう。
まとめ|仮想通貨の申告漏れに気づいたら状況に応じて対応しよう
仮想通貨で少額の利益が出た場合でも、申告の必要性は所得や本人の状況によって異なります。
また、申告し忘れた場合の対応は、申告期限と提出状況によって変わります。
- 2026年分の申告期限前:年間所得を整理し、必要なら期限内に申告する
- 過去年分で申告義務があったのに未提出:期限後申告を確認する
- 期限後に所得の計上漏れと税額の不足が見つかった:修正申告が必要か確認する
- 申告した税額が多すぎた:更正の請求ができるか確認する
- 所得税の確定申告が不要:住民税の申告も不要とは限らない
申告が必要だったかどうかは、仮想通貨の売却金額だけでは判断できません。
必要な記録を集め、所得と申告状況を確認することから始めましょう。
また、申告漏れを訂正する際には、本来の税金に加えて加算税や延滞税が生じる場合があります。具体的な取り扱いは、申告・納付の状況によって異なります。
個別の判断に迷う場合は、国税庁の税務相談窓口や税理士へ相談してください。住民税については、住所地の市区町村で確認できます。
税制や暗号資産取引の公式情報を調べたい場合は、仮想通貨の公式情報源と調べ方も参考にしてください。
取引が見つかるかどうかではなく、必要な申告と手続きを正しく行うことが大切です。

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