「家族が仮想通貨を持っていたら、亡くなった後はどうすればいい?」「取引所のパスワードを知らなくても相続できる?」「ビットコインにも相続税はかかるの?」
仮想通貨(暗号資産)を相続するときは、銀行預金や証券口座とは異なる確認が必要になる場合があります。
特に重要なのは、暗号資産交換業者に預けている資産と、本人が秘密鍵を管理しているウォレットの資産では、相続時の手続きが異なることです。
取引所の口座にある資産は、相続人が事業者の正式な手続きを通じて承継する方法があります。一方、自己管理ウォレットでは、秘密鍵や復元手段が分からないと、資産が存在していても移転できない場合があります。
また、仮想通貨は相続税の対象になり得ます。ただし、仮想通貨を相続した人すべてに相続税の納付義務が生じるわけではありません。
この記事では、国税庁と国内取引所の公式情報をもとに、家族が最初に確認すること、取引所の相続手続き、自己管理ウォレットへの対応、相続税の評価方法、相続後に売却した場合の取得原価を解説します。
最初に結論
- 仮想通貨も相続財産の対象になります。取引所口座・自己管理ウォレット・貸付中の資産などを確認しましょう。
- 取引所にある資産は、故人のアカウントにログインして送金するのではなく、公式の相続窓口へ連絡します。
- 自己管理ウォレットは、復元手段の有無と、誰が資産を承継する権利を持つかを分けて確認します。
- 相続税は仮想通貨だけでなく、預貯金や不動産などを含めた遺産全体で判断します。
- 相続税の評価額と、相続後に売却するときの所得税計算に使う取得価額は、同じとは限りません。
仮想通貨も相続できる?最初に知っておきたい基本
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産は、経済的な価値を持つ財産です。
国税庁は、暗号資産を相続や遺贈、贈与によって取得した場合について、相続税または贈与税の課税対象になると説明しています。
つまり、本人が亡くなったからといって、保有していたBTCやETHが相続財産から自動的に除外されるわけではありません。
ただし、財産として相続の対象になることと、相続人が実際に資産を操作・換金できることは別の問題です。
例えば、取引所に預けているBTCであれば、取引所が用意する相続手続きを確認できます。
一方、本人が管理するウォレットにBTCがあり、秘密鍵や復元フレーズを誰も把握していない場合は、資産の存在を確認できても移転できない可能性があります。
相続では「財産の権利を確認すること」と「実際に資産へアクセスできること」の両方を考える必要があります。
参考:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」4-1
取引所・自己管理ウォレット・レンディングの違い
暗号資産の保管・運用方法によって、家族が確認する相手が変わります。
| 保有・利用方法 | 最初の確認先 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 国内の暗号資産交換業者 | 各社の公式相続窓口 | 本人確認、相続関係の証明、資産移管の条件 |
| 海外の取引所 | その事業者の公式サポート | 相続手続き、対応言語、居住国・利用規約 |
| 自己管理ウォレット | 保管記録、ウォレットの公式案内、相続の専門家 | 復元手段の所在、資産の管理権限 |
| レンディングサービス | 貸付先事業者・契約窓口 | 貸付中の数量、返還請求権、返還条件、報酬 |
| ステーキング・DeFi | 利用サービス・プロトコルの公式資料 | 預入資産、受取トークン、引き出し権限、残存する承認 |
例えば、故人が取引所で1ETHを保有し、別のサービスへ0.5ETHを貸し出していた場合、取引所の残高だけではすべての財産を把握できない可能性があります。
貸付中の資産については、契約上どのような返還請求権を持っているか、報酬の未払分があるかなどを確認する必要があります。
暗号資産の安全な管理方法については、仮想通貨の安全な保管方法|取引所とウォレットの違いでも解説しています。
家族が亡くなったら最初に行う5つの確認
仮想通貨を相続する可能性がある場合は、すぐに売却や送金を行うのではなく、保有状況と相続関係を整理しましょう。
次の5つを順番に確認すると、必要な手続きが分かりやすくなります。
- 相続人・遺言書・遺産分割の状況を確認する
- 故人が利用していた取引所やウォレットの手掛かりを集める
- 取引所・貸付先などの正式な窓口に連絡する
- 暗号資産の銘柄・数量と死亡時点の評価額を整理する
- 相続税や故人の所得税の申告要否と期限を確認する
① 相続人と遺言書を確認する
まず、誰が相続人になるのか、遺言書があるか、遺言執行者が指定されているかを確認します。
暗号資産交換業者では、相続人の人数や遺言書の有無によって必要書類が変わる場合があります。
例えば、Coincheckでは、遺言書・遺言執行者・遺産分割協議書の有無によって提出書類が異なると案内しています。
遺産分割の方針が決まる前に、家族の一人が自己判断でBTCを売却したり、自分のウォレットへ移したりすることは避けましょう。
相続放棄や相続人同士の協議にも影響する可能性があるため、権利関係が分からないときは弁護士などへ相談してください。
② 取引所やウォレットの利用状況を調べる
次に、故人が利用していたサービスを確認します。
手掛かりになるのは、取引所の名称が記載された書類、本人が作成した資産一覧、銀行口座の入出金履歴、取引履歴の控えなどです。
故人のメールやスマートフォンに関連する情報が残っている場合もありますが、機器・アカウントへアクセスする権限や利用規約を確認せずに、無断でログインすることは避けてください。
取引所の口座がありそうなら、パスワードが分からなくても正式な相続窓口へ相談できます。
一方、自己管理ウォレットでは、アプリ名やウォレットアドレスが分かっても、その情報だけで資産を移転できるとは限りません。
③ 資産を動かす前に記録を残す
相続に関する確認を進める際は、資産を売却したり移動したりする前の記録を残すことが重要です。
例えば、取引所の残高証明書、取引履歴、暗号資産の種類と数量、貸付中の契約内容などです。
相続開始時点の財産評価が必要になるため、後日資産を移した場合にも、死亡日時点の数量や評価額を確認できるようにしましょう。
なお、相続の手続き中に暗号資産の価格が変動することがあります。
現在の残高評価額と、相続開始時点の評価額は分けて保存してください。
取引所にある仮想通貨を相続する手順
国内の暗号資産交換業者に資産を預けている場合は、事業者が定める相続手続きを利用します。
原則的な流れは次のとおりです。
- 公式サイトから相続窓口を確認する
- 故人と相続人に関する情報を伝える
- 事業者から必要書類の案内を受ける
- 戸籍関係書類、相続届、本人確認書類などを準備する
- 相続人・遺言執行者など必要な人による手続きを進める
- 事業者による確認後、資産移管や払戻しを受ける
- 完了通知と取引履歴・残高証明書を保存する
必要書類と資産の受取方法は事業者ごとに異なります。
また、口座に日本円があるか、暗号資産があるかによっても対応が変わる場合があります。
bitFlyerの相続手続き
bitFlyerは、公式FAQで相続手続きを案内しています。
故人がbitFlyerに口座を持っていた場合、法定相続人から問い合わせフォームの「相続手続きについて」を選んで連絡する方法が用意されています。
問い合わせ時には、故人の氏名、生年月日、住所、死亡日などの情報や、代表相続人に関する情報が必要です。
その後、bitFlyerから必要書類と提出先の案内があります。
同社が例示している書類には、法定相続情報一覧図、相続人の印鑑登録証明書、同社指定の相続届兼委任状などがあります。
書類の確認後、原則として故人の口座にある日本円と暗号資産を、代表相続人のbitFlyer口座へ移管する流れです。
bitFlyerは、相続手続きに伴って暗号資産を自動的に日本円へ交換するのではなく、原則として資産をそのまま移管すると説明しています。
また、相続手続きとは別に残高証明書の発行を希望する場合は、その旨を伝える必要があります。
Coincheckの相続手続き
Coincheckも、公式FAQで相続手続きを案内しています。
相続人が公式問い合わせフォームから連絡し、故人と代表相続人に関する情報を伝えます。
事業者側の確認後、必要書類や相続届の案内が行われます。
Coincheckの2026年10月14日更新FAQによると、暗号資産を含む口座の相続では、原則として代表相続人のCoincheck口座へ資産を移管する方法が案内されています。
そのため、代表相続人が同社の口座を持っていない場合は、所定の条件に従った口座開設が必要になることがあります。
ただし、受取人の年齢や保有資産の種類、払戻し希望などによって取り扱いが異なる場合があります。
また、Coincheckでは、正式な資産移管手続きの前に残高証明書の発行を依頼できる場合があります。
口座を開設すれば誰でも故人の資産を受け取れるという意味ではありません。相続人としての確認と所定の手続きが必要です。
参考:Coincheck公式「相続手続きについて教えてください」
取引所によって必要書類は異なる
bitFlyerとCoincheckでも、申請方法や提出書類、資産の移管条件は完全には一致しません。
ほかの事業者を利用していた場合は、その事業者の公式案内を確認する必要があります。
| 書類・情報 | 主な目的 |
|---|---|
| 故人の氏名・生年月日・住所等 | 対象となる口座の確認 |
| 死亡の事実を確認できる戸籍等 | 相続が発生したことの確認 |
| 法定相続情報一覧図や戸籍関係書類 | 相続人の範囲と関係の確認 |
| 印鑑登録証明書・本人確認書類 | 手続きをする人の確認 |
| 相続届・委任状 | 事業者が指定する相続手続き |
| 遺言書・遺産分割協議書等 | 資産を承継する人や分割内容の確認 |
表の書類が全員に必ず必要という意味ではありません。
実際には、遺言書の有無、相続人の人数、未成年者の有無、代理人の利用などによって必要書類が変わります。
法定相続情報一覧図については、法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続」で確認できます。
自己管理ウォレットの仮想通貨はどう相続する?
自己管理ウォレットでは、取引所への相続申請だけで資産を移管できるとは限りません。
本人が管理していた秘密鍵や復元フレーズ、ハードウェアウォレットなどの復旧方法を確認する必要があります。
ただし、ウォレットへアクセスするための情報が見つかったことと、その資産を自分の判断で自由に送金できることは別です。
相続人が複数いる場合は、遺言書や遺産分割協議、適切な管理権限などを確認する必要があります。
秘密鍵と復元フレーズとは?
秘密鍵は、ブロックチェーン上の暗号資産を移転するための電子署名に関係する情報です。
復元フレーズは、対応するウォレットを復旧するための情報で、一般に12語や24語などの単語で構成される方式があります。
これらの情報を第三者へ渡すと、資産を無断で移転される可能性があります。
そのため、相続手続きの説明を装って秘密鍵や復元フレーズの入力を求めるサイトや連絡には注意してください。
また、ウォレットアプリのパスワードと、秘密鍵や復元フレーズは同じではありません。
ウォレットアプリのロックを解除するパスワードが分からなくても、正規の復元手段があれば復旧できる方式があります。
一方、必要な復元手段が完全に失われた場合、資産を動かせなくなることがあります。
ウォレットの復元情報が見つからない場合
自己管理ウォレットの復元手段が見つからない場合は、まず故人が残した資産管理の資料を確認しましょう。
例えば、使用していたウォレットの名称、ハードウェアウォレットの保管場所、ウォレットアドレス、バックアップの存在を示す記録などです。
ウォレットアドレスが分かれば、対応するブロックチェーンの情報から残高や取引履歴を確認できる場合があります。
ただし、アドレスから残高を確認できても、秘密鍵を復元できるわけではありません。
また、ウォレットには複数のアカウントがある場合や、異なるネットワーク上に資産を保有している場合があります。
残高が見つからないことだけで、資産が存在しないと断定しないようにしましょう。
復元手段がない場合の対応は、利用しているウォレットの公式案内や、デジタル資産に詳しい専門家へ相談してください。
復元フレーズが見つかった場合の注意点
復元フレーズが見つかっても、すぐにインターネット上の復元サービスへ入力してはいけません。
復元フレーズを入力させ、暗号資産を盗み取る偽サイトが存在するためです。
また、復元フレーズを家族全員が見られる共有フォルダ、一般的なクラウド文書、メール、チャットなどに保存することは避けましょう。
復元フレーズを知る人が増えるほど、漏えいや不正利用のリスクも増えます。
資産を承継する権利関係が整理できていない場合は、送金操作を急がず、相続手続きを確認してください。
相続関係が確定し、正式な管理者が安全な環境で資産を移転する場合も、利用するウォレットの公式な復旧方法と対応ネットワークを確認する必要があります。
詳しくは、仮想通貨の保管方法と復元フレーズの注意点を参考にしてください。
レンディング・ステーキング中の資産はどう確認する?
故人が保有していた暗号資産は、取引所やウォレットに残っているとは限りません。
レンディングやステーキングなどのサービスで利用中の資産がある場合は、契約内容や保有している権利を確認する必要があります。
レンディング中の暗号資産
レンディングは、暗号資産を事業者などへ貸し出し、契約に基づいて報酬を得る仕組みです。
貸付中は、取引所の通常残高に資産が表示されない場合があります。
そのため、相続時には貸付数量、貸付先、返還条件、未払報酬の有無などを確認しましょう。
例えば、故人が1BTCを購入し、そのうち0.5BTCをレンディングサービスへ貸し出していたとします。
取引所に0.5BTCだけが表示されていても、残りの0.5BTCに関する貸付契約上の権利が存在する可能性があります。
一方、貸付先の状況によっては、予定どおり全額が返還されないリスクもあります。
契約上の請求権と実際の返還可能性を確認し、評価や税務上の扱いに迷う場合は専門家へ相談してください。
ステーキング・DeFiの資産
ステーキングやDeFiを利用していた場合は、暗号資産をスマートコントラクトへ預けたり、代わりに別のトークンを保有したりしていることがあります。
この場合、ウォレットに表示される資産だけでなく、利用したプロトコル、預入数量、受取トークン、引き出し条件なども確認する必要があります。
ただし、ウォレットの接続解除だけで、預入資産が戻ってくるわけではありません。
複雑なDeFi取引がある場合は、相続人の権利関係を確認したうえで、プロトコルの公式情報と取引履歴を整理しましょう。
家族向け「仮想通貨資産一覧」の作り方【見本付き】
仮想通貨の相続で困りやすいのは、家族が資産の存在を知らないことです。
本人が生前に利用サービスと保管方法を整理しておくと、家族が資産を探す手掛かりになります。
ただし、資産一覧と秘密鍵・復元フレーズは分けて管理することが重要です。
資産一覧の記載例
次の表は、家族向けに作成する資産一覧の架空の見本です。
| 区分 | サービス・資産 | 保有数量の参考例 | 家族が確認するもの |
|---|---|---|---|
| 国内取引所 | 取引所A/BTC | 0.10BTC | 事業者名・公式相続窓口・取引履歴の保存先 |
| 国内取引所 | 取引所B/ETH | 1.00ETH | 事業者名・本人の登録情報の手掛かり |
| 自己管理 | ハードウェアウォレット/ETH | 0.50ETH | ウォレットの種類・保管場所・復旧手段の管理方針 |
| レンディング | 貸付先C/BTC | 0.20BTC | 契約書・返還条件・問い合わせ先 |
| DeFi | プロトコルD/トークン | 契約・履歴で確認 | ネットワーク・ウォレットアドレス・取引履歴 |
この表のサービス名・数量は説明用の架空の内容です。
実際には、資産数量や評価額は取引によって変動するため、一覧の作成日と最終更新日も記録するとよいでしょう。
また、一覧に記載した数量と現在の残高が一致するとは限りません。相続時には、取引所の正式な残高確認やウォレットの履歴などで確認する必要があります。
資産一覧に書く情報・書かない情報
| 書いておくと役立つ情報 | 一般に共有する一覧へ書かない情報 |
|---|---|
| 取引所・サービスの正式名称 | 取引所のログインパスワード |
| 公式サイト・相続窓口の探し方 | 二段階認証の復旧コード |
| ウォレットの種類と対応ネットワーク | ウォレットの秘密鍵 |
| 保有銘柄・参考数量・記録更新日 | 復元フレーズの全文 |
| 取引履歴や契約書の保管場所 | 資産移転を承認できる認証情報 |
| 遺言書や相続関係書類の保管先 | 誰でも利用できる復旧リンク |
資産一覧は、家族が「何を調べればよいか」を知るための資料です。
ログインや送金を行うための秘密情報を、誰でも読める形でまとめる必要はありません。
復元手段を安全に引き継ぐには?
自己管理ウォレットを相続するためには、将来、権利を持つ人が安全に復旧できる仕組みを考えておく必要があります。
例えば、ウォレットの種類、復元手段の存在、管理責任者、保管場所の確認方法などを別々に整理する方法があります。
秘密鍵や復元フレーズそのものについては、第三者から閲覧されない管理方法を選び、必要に応じて弁護士などの専門家と引き継ぎ方法を検討してください。
単純に復元フレーズを家族の共有クラウドへ保存したり、メールで送信したりすることは避けましょう。
また、保管場所を厳重にしすぎて、権利を持つ相続人が存在自体を把握できなくなることにも注意が必要です。
資産の存在を知らせる仕組みと、資産を動かせる秘密情報の管理は分けて考えましょう。
仮想通貨の相続税はいくらから?
仮想通貨を相続した場合でも、必ず相続税を納めるとは限りません。
相続税が必要かどうかは、仮想通貨だけでなく、預貯金、不動産、株式などを含めた相続財産全体で判断します。
債務や葬式費用、相続税の計算に含める贈与財産なども、法律上の要件に従って確認する必要があります。
相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数
国税庁によると、相続税の基礎控除額は次の式で計算します。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、法定相続人が配偶者と子ども1人の合計2人なら、基礎控除額は次のとおりです。
3,000万円+600万円×2人=4,200万円
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
ただし、法定相続人の人数の数え方には、相続放棄や養子に関する特別な取り扱いがあります。
実際の基礎控除額は、戸籍などで相続関係を確認したうえで計算してください。
仮想通貨が少額でも、ほかの遺産と合算する
例えば、法定相続人が2人で、次の財産がある架空のケースを考えます。
- 暗号資産:800万円
- 預貯金:2,000万円
- 不動産など:2,000万円
- 合計:4,800万円
仮想通貨だけを見ると800万円ですが、ほかの財産を含めた合計は4,800万円です。
基礎控除額が4,200万円で、債務・葬式費用・非課税財産・生前贈与の加算などを考慮しない単純な条件なら、基礎控除額を600万円上回ります。
この場合、相続税の申告が必要になる可能性があります。
ただし、基礎控除を超えた600万円が、そのまま相続税額になるわけではありません。
実際の税額は、法定相続分や財産の取得割合、各種の税額軽減・控除などを踏まえて計算します。
配偶者の税額軽減など、申告書の提出が適用条件となる制度もあります。
相続財産の額や家族構成に応じて、国税庁の案内を確認しましょう。
相続税の評価額はどう決める?BTCの計算例
仮想通貨の相続税評価では、相続開始時点の価値を確認する必要があります。
国税庁の暗号資産税務FAQ「4-2」では、活発な市場が存在する暗号資産について、原則として相続人等が取引している暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格によって評価すると説明しています。
課税時期とは、相続の場合、通常は被相続人が死亡した時点を指します。
BTCを相続した場合の評価例
例えば、故人が0.10BTCを保有しており、相続開始時点の評価に用いる1BTCの価格が1,000万円だったと仮定します。
この場合、相続税の評価額は次のようになります。
0.10BTC×10,000,000円=1,000,000円
この例では、相続税の財産評価額は100万円です。
ただし、これは架空の価格を使った説明例です。
実際には、相続開始時点の適切な取引価格と数量を確認する必要があります。
複数の取引所で価格が違う場合
取引所によって、同じ時点のBTC価格が多少異なる場合があります。
国税庁は、納税義務者が複数の暗号資産交換業者で取引を行っている場合、納税義務者が選択した事業者の課税時期の取引価格によって評価して差し支えないと説明しています。
また、販売所で購入価格と売却価格が別々に公表されている場合には、納税義務者が売却する側の価格で評価して差し支えないとしています。
評価に使用した取引所名、価格、確認日、対象銘柄と数量を記録しておきましょう。
なお、取引が活発ではない暗号資産では、一般的な取引所価格だけで評価できないことがあります。
その場合は、資産の性質や取引実態などに応じた個別の評価が必要です。
参考:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」4-2
相続後に仮想通貨を売却したら税金はどうなる?
ここは、仮想通貨の相続で特に間違えやすいポイントです。
相続税の評価額と、相続後に売却したときの所得税計算に使う取得価額は、同じとは限りません。
相続税では、原則として相続開始時点の財産価値を評価します。
一方、相続した仮想通貨を後から売却する場合は、所得税の計算に使う取得価額を、別のルールに従って求める必要があります。
国税庁FAQ「1-5④」の取得価額ルール
国税庁の2025年12月版FAQ「1-5 暗号資産の取得価額」では、次の取得方法について、被相続人の死亡時に被相続人が選択していた方法で評価した金額を取得価額とすることが示されています。
- 相続
- 相続人に対する死因贈与
- 包括遺贈
- 相続人に対する特定遺贈
この場合、相続税の計算で使った死亡時の時価を、そのまま売却時の取得原価にするわけではありません。
被相続人が暗号資産について採用していた評価方法や、その時点の取得価額に関する記録を確認する必要があります。
なお、一般的な生前贈与や上記以外の遺贈などについては、取得価額や所得税の取り扱いが異なる場合があります。
「相続・遺贈・贈与はすべて同じ計算方法」と考えないようにしましょう。
具体例:相続税の評価額100万円、所得税の取得価額40万円
先ほどの0.10BTCを相続した例で、次の架空の条件を考えます。
- 相続した数量:0.10BTC
- 死亡時の相続税評価額:1,000,000円
- 故人が死亡時に採用していた方法で評価した0.10BTCの金額:400,000円
- 相続後に0.10BTCすべてを売却した代金:1,200,000円
- 相続人はほかにBTCを保有・取得していない
- 手数料などは考慮しない
この条件では、相続税の評価額は100万円です。
しかし、相続後の売却に関する所得税計算では、国税庁FAQ「1-5④」に従って求めた40万円が取得価額になります。
したがって、売却損益の計算例は次のとおりです。
1,200,000円−400,000円=800,000円
| 項目 | 架空の金額 | 何の計算に使う? |
|---|---|---|
| 死亡時の相続税評価額 | 1,000,000円 | 相続税の財産評価 |
| FAQ1-5④による取得価額 | 400,000円 | 相続後の売却原価 |
| 相続後の売却代金 | 1,200,000円 | 売却時の収入金額 |
| 売却損益の計算例 | 800,000円 | 所得税の所得計算 |
この例で、売却代金120万円から相続税評価額100万円を差し引いて、所得を20万円と計算してしまうのは適切ではありません。
また、実際には相続人が同じBTCをほかにも保有している場合、総平均法・移動平均法などによって売却原価を計算する必要があります。
取得価額が不明な場合や複数の取引履歴がある場合は、専門家への確認も検討してください。
取得原価の具体的な年間計算については、仮想通貨の損益計算方法|総平均法・移動平均法の実例で詳しく解説しています。
参考:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」1-5④
相続税と所得税は別々に確認する
相続した仮想通貨については、財産を承継したことによる相続税の問題と、後日売却・交換したことによる所得税の問題が生じる場合があります。
これは、同じ税金を単純に二重計算しているという意味ではなく、別の課税関係です。
ただし、相続税額や後日の所得税額がいくらになるかは、実際の財産、取得価額、所得、控除などによって異なります。
相続税の評価額と売却時の取得価額を混同せず、計算書を分けて保管しましょう。
仮想通貨の相続税申告はいつまで?
相続税の申告と納付には期限があります。
国税庁によると、相続税の申告期限は、原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
通常は、被相続人の死亡を知った日が死亡日になります。
ただし、実際の期限は相続を知った日などの状況によって確認する必要があります。
相続人間で遺産分割がまとまっていない場合でも、申告期限が自動的に延長されるわけではありません。
特に、価格変動の大きい暗号資産を保有している場合は、資産の評価と必要な納税資金の準備を早めに進めることが重要です。
相続税以外に「準確定申告」が必要な場合もある
故人が亡くなる前に仮想通貨を売却するなどして所得を得ていた場合は、故人の所得税についても確認が必要になることがあります。
年の途中で亡くなった人に所得税の確定申告義務がある場合、相続人などが本人に代わって申告する手続きを「準確定申告」といいます。
国税庁は、準確定申告の期限を、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内と説明しています。
例えば、故人が死亡する前にBTCを売却して利益を得ていた場合、その年の所得と申告義務を確認する必要があります。
ただし、すべての故人について準確定申告が必要という意味ではありません。
相続税の10か月と、準確定申告の4か月は別の期限です。
参考:国税庁 No.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
申告期限までに遺産分割が終わらない場合
相続人の間で遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続税の申告期限は原則として変わりません。
また、配偶者の税額軽減などは、遺産分割の状況や申告書の提出など、所定の適用条件があります。
暗号資産の相続先が決まっていない場合も、申告の必要性と期限を確認しましょう。
仮想通貨の相続でよくある質問
Q. 故人の取引所パスワードが分からなくても相続できますか?
国内の暗号資産交換業者では、相続人向けの手続きが用意されている場合があります。
例えば、bitFlyerやCoincheckは、必要書類による相続人の確認と資産移管について公式に案内しています。
故人のパスワードを無理に調べるのではなく、各社の公式相続窓口へ連絡してください。
Q. 故人のスマートフォンからログインしてBTCを送ってもよいですか?
本人が亡くなった後に、家族が自己判断で故人の口座へログインし、暗号資産を送金することは避けましょう。
相続人の権利関係、利用規約、取引記録の保存などに問題が生じる可能性があります。
取引所については正式な相続手続きを利用し、自己管理ウォレットについても承継権限を確認したうえで対応してください。
Q. 復元フレーズが見つからないウォレットは相続できませんか?
資産が相続の対象になることと、実際に資産を移転できることは別です。
自己管理ウォレットでは、秘密鍵や復元手段を失うと、資産へアクセスできなくなる可能性があります。
ウォレットの種類やバックアップ方式によって復旧方法が異なるため、まず利用していたウォレットの公式情報を確認しましょう。
Q. 仮想通貨を800万円相続したら相続税は必ずかかりますか?
必ずかかるわけではありません。
相続税は、仮想通貨だけでなく、預貯金・不動産・株式などを含む相続財産全体と、基礎控除額などを踏まえて判断します。
法定相続人が2人の場合、基礎控除額は原則4,200万円です。ただし、実際の相続財産や各種の加算・控除を確認する必要があります。
Q. 相続したBTCを売却するときは、死亡時の時価を取得原価にできますか?
相続税評価額をそのまま売却原価にできるとは限りません。
国税庁FAQ「1-5④」では、相続などの所定の取得方法について、被相続人が死亡時に選択していた評価方法で算出した金額を取得価額とします。
故人の取得履歴や採用していた評価方法を確認してください。
Q. レンディング中の仮想通貨も相続対象ですか?
貸付契約に基づく返還請求権など、経済的な価値を持つ権利が相続財産となる場合があります。
ただし、契約内容や貸付先の状況によって、資産の確認方法、返還条件、評価方法は異なります。
利用した事業者の公式窓口で契約内容を確認しましょう。
Q. 仮想通貨を家族に生前贈与すれば相続税はかかりませんか?
生前贈与には贈与税などの課税関係が生じる場合があります。
また、相続税の計算では、一定の生前贈与財産を加算する制度があります。
さらに、暗号資産を贈与した側にも所得税上の取り扱いが関係する場合があります。
したがって、生前に送金すれば必ず税金がなくなるという意味ではありません。
贈与や遺贈、相続は、国税庁の案内に従って区別して確認してください。
Q. 家族に秘密鍵を渡しておけば相続準備は万全ですか?
秘密鍵や復元フレーズを共有するだけでは、相続準備が十分とはいえません。
秘密情報が漏えいすると資産を移転されるリスクがあり、相続人の範囲や資産を承継する権利関係も別に確認する必要があります。
家族向けには資産の存在と保管先を伝え、秘密情報は安全な方法で別に管理することが大切です。
まとめ|仮想通貨の相続は「資産の発見・正式な承継・税金」を分けて考えよう
仮想通貨を相続するときは、まず資産の存在と保有方法を確認しましょう。
取引所にある暗号資産は、各社の公式相続窓口から手続きを確認できます。
自己管理ウォレットでは、秘密鍵や復元手段が必要になる場合がありますが、相続人の権利関係を確認せずに送金することは避けてください。
また、仮想通貨の相続では次の点が重要です。
- 資産の調査:取引所・自己管理ウォレット・レンディング・DeFiなどを確認する
- 正式な相続手続き:取引所や貸付先の公式案内を利用する
- 家族向け一覧:サービス名と資産の手掛かりを整理し、秘密情報は別に管理する
- 相続税:ほかの財産と合算し、基礎控除と申告要否を確認する
- 相続税評価:原則として相続開始時点の適切な価格を確認する
- 相続後の売却:国税庁FAQ1-5④などに従って取得価額を計算する
- 申告期限:相続税の10か月と、必要な場合の準確定申告の4か月を区別する
特に、相続税の評価額と、相続後に暗号資産を売却した際の取得原価を混同しないことが重要です。
一般的な暗号資産取引の税務や申告要件については、仮想通貨の税金はいくらから?確定申告の基本も参考にしてください。
この記事は日本の一般的な相続・税務情報を説明したものです。相続人が複数いる場合、海外取引所やDeFiを利用している場合、取得価額が不明な場合などは、取引履歴と契約書を整理し、必要に応じて弁護士・税理士などへ相談してください。
税務上の相談先は、国税庁の税務相談窓口で確認できます。

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